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「こっちも抜けてるみたいですよ」 
 緊急事態だというのに、間の抜けた声でハルトヴィックが言う。手にしているコーキングガンがおならのような音を上げ、発泡性のコーキング剤がパネルの隙間に吹き付けられる。 
「年代もんの施設だ。念入りにチェックしろ」 
 タバコを吹かしながら、ラムケ大尉も同様の作業を行っていた。本来真空内にある閉鎖系施設内でタバコを吸うことは規則違反であったが、今はタバコが必要だった。本来なら流れることのない紫煙が、勢いよく流れている。エアコンが作り出す空気の流れではなかった。漏れ出す空気に乗って流れているのだ。 
「大尉、あと5、6本用意してください。おそらくこの区画の外に穴があると思います。そこを塞げば、止まるはずです」 
 そういうハルツ准尉にラムケはコーキング剤を箱ごと渡した。ハルツは軽く飛び跳ねながらエアロックに向かった。 
 ハルツ准尉が外に出てからしばらくすると、鳴り響いていた警報が鳴り止んだ。コンプレッサーがうなりを上げ、空気が充填される。ラムケはタバコをもみ消し、ポケットに押し込んだ。 
「一休みしたら見回りだな。ヅッカー、飯の仕度を頼む」 
 緊張で青い顔をしていたヅッカー少尉候補生があわててうなずく。ラムケは何事も無かったかのような顔をして、図面に眼をやった。落ち着いた姿を見せることも、高級士官の仕事だからだ。ヅッカーは開けっ放しになっている隔壁の向こうに消えた。 
 第0912小隊が展開するのは、嵐の大洋の北東部に位置するカルパティア山脈の麓にある小さな基地だった。基地と言っても最初から軍事目的に作られたものではなく、月の資源を軌道上に打ち上げるためのマスドライバー基地を改装したものだった。施設自体は第四次世界大戦より前に作られたものであり、内装は占領時の大規模な改装により一新されていたが、外殻は建設当時のものであった。
 月面での戦いは嵐の大洋の南側が中心であり、第0912小隊は基地の維持が任務という状態であった。形式的に命じられていた哨戒任務も、偵察ポッドの情報を基地に据え置きの戦術AIが処理し、指揮を行うKK(ケーニヒスクレーテ)に送信するだけであった。実質上、ラムケ達にやることはなかった。といってもサボっているわけにはいかず、老朽化が激しい施設の点検整備と修理が日課となっていた。 
 解隊された第892実験大隊から転属になったのは、ラムケ大尉、クルツリンガー中尉、ハルツ曹長、ハルトヴィック軍曹の4名だけだった。それ以外の隊員は各無人兵器大隊へ無人兵器担当官として転属していった。大尉たちの転属は、表向きは左遷であったが、内情を知っている者が見れば、口封じであることが明白であった。 
 当のラムケ大尉は何も考えていなかった。むしろ、上部指揮ユニットから無理難題を押し付けられない今の状況の方が気に入っていた。暗い復讐心を抱いていた者は、穴の開いた基地にラムケを押し込め、労苦を背負わせる事で鬱憤を晴らそうとしたのだ。しかし、根っからの技術屋のラムケにしてみれば、水漏れする船を直すことなど、造作もないことであった。 
 番号だけで呼ばれる小さな基地には、ラムケを隊長とする戦闘要員12名と、整備要員4名、基地の保守要員2名の全18名しかおらず、戦力も嵐の大洋に展開する部隊の中では、無視されてもしょうがない程度のものしかなかった。 
 味気ないが慣れてしまったら悪くない食事を終え、各員に作業を割り振る。それぞれが機材を持って担当区域に消えると、発令所にはラムケとクルツリンガーの二人だけとなった。 
「ここに来てから一週間。やったことと言えば修理と整備だけですね」 
「いきなり戦闘に比べれば楽なもんだ。新人の訓練に付き合ってると思え」 
 ラムケの子飼いの3人を除くと戦闘要員のほとんどは士官候補生であった。士官学校の教程を終え、一応「少尉」の階級を頂いてはいるが、中身は学校を出たての頭でっかちの若者に過ぎなかった。候補生たちは、お目付け役の下士官とともに前線部隊に配属され、一定期間の勤務を終えるか、死体になるかして帰っていく。元下士官の少尉候補生は、即戦力として歓迎されるが、学校出はそうでもなかった。 
 これもラムケに恨みを持つ者達による暗い復讐だった。 
 CRTに基地のあちこちに設置されたカメラからの映像が映し出されている。危なっかしい腰つきの候補生に保守要員が付っきりで作業を支援している。地球上の6分の1とはいえ重力がある状況では、航宙艦の中より作業しやすいはずであるが、慣れるまでは思い通り動けないものだ。 
「地球行きを志願するガッツは認めるが……」 
 緊張のあまり工具を取り落としそうになる候補生の姿に、ラムケは苦笑した。地球は、現在シュトラール軍が部隊を派遣している中で最大の激戦地だった。激戦地に「派遣された」キャリアは、その後の軍隊生活を大きく左右した。「戦地知らず」は最終階級で同期に二個以上差を付けられることなどざらであった。 
「植民星出身者が多くてよかったな。本国出は扱いにくい」 
「そりゃ必死ですよ。帰っても農業するか、失業しか待ってませんから」 
 いつの間にか発令所にやってきたハルトヴィックが口を挟む。 
「G区画の見回りじゃなかったのか?」 
「めんどさいので、ガンスにやらせてます」 
 CRTに1機のガンスが基地の周りを回っているという情報が表示される。 
「傭兵軍のスーツから吐き出される排気を検知できるセンサーを遊ばせとくのはもったいないですよ」 
「そういえば、おまえも植民星の出だったな」 
「何も無い田舎ですヨ。一面のジャガイモ畑しかなくて──戦車みたいなロボットトラクターでぐわっと芋掘りするぐらいの……実家は小作人でしたけど。何も無いとこでのんびり過ごしてもよかったんですけど、やってみたいもんがあったんで」 
「何をしたかったんだ」 
 ハルトヴィックは照れ隠しの笑みを浮かべて、言った。 
「海で泳いでみたかったんですよ。それをするには、軍隊に入るのが一番安くて簡単な方法でした」 
「へぇ」 
「気がつけば地球で、大尉の部下になって無人兵器を相手にしてました──海に行こうなんて思わなければよかった」 
「ここは良いから、E区画の支援に行ってやれ。候補生達が困ってるぞ」 
「了解」 


 月面を巡る戦闘は、2886年4月に傭兵軍が大反攻作戦「ファーゼライ」を成功させたことにより、激しさを増した。 
 ファーゼライ作戦に先立ち、傭兵軍はシュトラール軍の監視衛星の大多数を破壊し、数に劣るシュトラール軍が頼りにしていた眼を奪ったのである。監視衛星の軌道への再投入作戦は、傭兵軍が軌道に投入した宙間戦闘機「ルナダイバー」と新型宙間戦闘スーツ「スネークアイ」に阻止された。シュトラール軍は衛星軌道上の制宙権を確保するために戦力を増強、対する傭兵軍も増援を阻止するために月面への直接攻撃を行う等、一進一退の攻防が展開されていた。 
 シュトラール軍は、本国からの資材と人員の多くを月面にプールし、戦況に応じて地球へ送り込んでいた。地球に下ろしてから各地に運ぶより、つねに地球に向いている月の表の面より目的に向かって「落とす」方が効率が良いのである。傭兵軍も月面に基地を建設し、同様に補給物資を送り込んでいた。月は両軍の補給線の重要な中間点であった。 
 月での戦闘は、自力に勝るシュトラール軍が優勢であった。第四次世界大戦以前に各地に作られた鉱山や射出基地を軍事施設に改造し、無人兵器を中核とした部隊を展開させていた。一方の傭兵軍は、補給基地に戦力を集中させ、地球や軌道上から投入される増援を頼りに作戦を行うという戦略で対抗していた。 
 2886年9月には、大規模な月面降下作戦「ダイナモ」が発動されたが失敗。それにも懲りずに、月面への定期的な戦力投入を目的とした「ホワイトフロッグ作戦」が開始され、TL-17船団が8割近い損害を受けて壊滅するということもあったが、傭兵軍は月面戦力を増強し続け、シュトラール軍の月面部隊と戦闘を続けていた。 

「月には兎がいるんですよ」 
 クルツリンガーは、士官候補生たちに高校の物理の教師だった整備兵から聞いた話しを披露していた。まだ宇宙に出る等ということを想像以外で考えてもいなかった頃の人類は、最も近い星に様々な生物がいることを夢想していた。その中の一つが兎だった。 
「兎は月面に穴を掘って暮らしていて、時々餅をつくために巣穴から出てくるそうです」 
「餅って何ですか?」 
「米で作るお菓子と聞きました」 
 突然警報が鳴った。CRTに赤い警告文字が出る。席についていた候補生が慌ててクルツリンガーを見上げる。 
「──空襲ですか」 

『大尉、発令所へ』 
 仮眠を取っていたラムケはつなぎを着ながら発令所に飛び跳ねてきた。 
「何があった?」 
「空襲かもしれません」 
「かもしれんだ?」 
 候補生がついていたコンソールのCRTを覗き込みながら言う。候補生があわてて席を譲ろうとするが、ラムケは無視した。 
「こいつだな?」 
 月の軌道上の飛行物体の航跡が表示されている。その中の一つにマーカーが付けられ、軌道が黄色で表示されていた。黄色で表示されるのは敵味方不明の物体である。 
「最初はTL-21の残骸かと思ったんですが、残骸にまぎれて軌道を修正したようです。アルント候補生に暇つぶしに観測データの洗い出しをやらせてたところひっかかったんです」 
「よくやったぞ。アルント」 
 黄色の線は引き伸ばされ、地球の衛星軌道上に達していた。そこは傭兵軍が制宙権を握っている宙域であり、兵器生産用の軌道プラントが稼動していた。 
「こっちの観測衛星の少ないところだな」 
「前の戦闘で穴だらけになってますからね。他にも同様の軌道を取っている物体があると思いますが、ここのセンサのへなちょこなデータを漁ってもかすりもしないでしょう」 
「どこに落ちる?」 
「この基地から南に300kmほどのところです。ただ単に落ちる場合ですが」 
「上空の通過高度は?」 
「3kmです」 
 アルントが応える。 
「司令部には伝えたか?」 
「まだです」 
「気づいてると思うか?」 
「司令部が、ですか? おそらく」 
「まぁ、そうだろうな。ここのヘコいセンサのデータを、暇つぶしに洗って見つけられるほどだ。司令部には生データだけ送れ。こっちの解釈は一切付けるな」 
「どうしてですか?」 
 候補生の疑問に、ラムケは皮肉げな笑みを浮かべて答えた。 
「正体に気づいていないフリをしたい。下手に騒げば迎撃を命じられる。お前らも死にたくはないだろ?」 
 アルントはどう答えていいのかわからず、クルツリンガーに助けを求める視線を送った。 
「地球軌道から降下してくるのは、傭兵軍の精鋭部隊──ここの戦力で、そんな連中を相手にはしたくない、ということですよ……通信はいります」 
 画面に通信文が到着したことを示すアイコンが表示された。 
「KKより、指揮官宛です。回します」 
「いい。そのまま開け」 
 KKからの命令は、ラムケの希望とは完全に異なるものであった。 
『迎撃せよ』 
 舌打ちが響く。 
「全機出撃準備だ」 

 ラムケたちより南に進むこと1200km。嵐の大洋の真ん中では、両軍による戦闘が行われていた。 
 アーマルコライト鉱山跡に陣取るシュトラール軍に対して、傭兵軍は有力な月面部隊である第101連隊第3大隊を中核とした打撃部隊による強襲を実行したが、シュトラール軍の無人兵器大隊により損害を受け、戦闘は膠着状態となっていた。 
 地球での戦いと違い、周囲を見渡せる突出部や、バッテリー充電のための太陽電池システムを展開できるある程度の面積の平地以外、土地自体を占領しても何の意味もなかった。月面での戦いは、地球の砂漠や海の戦いに似ていた。 
 傭兵軍は、嵐の大洋の中でも最大規模の施設を有するアーマルコライト鉱山跡を是が非でも押さえたかった。この施設を手に入れれば、嵐の大洋全域を勢力圏に納めることができる。鉱山施設のマスドライバーを使えば、部隊や補給物資の移動も今より楽に行うことができ、さらには、鉱山の操業を再開し、高純度のチタン鉱石であるアーマルコライトを地球へと送ることも考えられていた。 
 そこで傭兵軍は、戦況を挽回するために虎の子の部隊を投入した。第504砲兵連隊と名づけられたその部隊は、大型の月面作業車を改装した自走砲兵車9基を擁し、月面での両軍唯一の機動重火力部隊であった。砲兵車は、全長15mはあるクローラータイプの車体にマスドライバーを装備し、質量1トンの通常弾か、対施設用の2.2トンの重貫通弾、1.7トンの軽貫通弾のいずれかを発射できるという怪物であった。砲兵車は同じシャーシの弾薬と電源を供給する支援車とペアで行動するため、連隊は18輌の車輌を有し、さらには3輌の大型回収車、偵察・連絡用の5機のキャメル、索敵・弾着観測用の機動歩兵数機で編成されていた。 
 砲兵車から発射される砲弾は、反応弾を除けば、月面で使われるすべての兵器の中で一番の破壊力を持っていた。弾道飛行で月面目掛けて降ってくる無動力の砲弾を事前に探知することは難しく、迎撃などは不可能だった。空気による爆風効果が無くても、500kgを超える炸薬が生み出す衝撃は、防護された施設を一瞬にして粉砕した。 
 シュトラール軍は同連隊の捕捉を画策していたが、鈍重そうな外見とは裏腹に砲兵車の動きは素早く、有効打を上げるような攻撃は今まで一度もできなかった。 
 第504砲兵連隊の攻撃は、新たな月面降下部隊の到着と同時に行われることになっており、砲兵車は配置につき、攻撃命令を待っていた。 


「交差軌道に打ち上げるぞ。計算どおりなら、交戦可能時間は30秒以内だ」 
 重カウツのコクピットに詰め込まれたラムケは、発令所から送られてくるデータを横目で見ながら、同じように機体に詰め込まれて出撃前の最終チェックを行っている候補生達に言った。 
「敵影が見えたら無照準で弾が切れるまでぶっぱなせ。狙ってもどうせ当たらんからな。華麗に相対速度を殺してみようなんで考えるな。フリーゲのスラスターを眼一杯吹かしても、速度を殺せるどころか、月の脱出速度も出せんぞ。だから、怖くなったらとにかく逃げろ。回収船に拾ってもらえなくなるが、月から放り出されることはない。20時間ほど飛んでれば、2周目の頭には高軌道の回収船が拾ってくれる。宇宙戦闘ではパニックが最大の敵だ」 
 動いていた機体が軽い衝撃と共に止まった。マスドライバーの誘導路にパレットが固定された証だった。月面からは、機体の推進システムだけでは十分な速度を得られず、表面を撫でるような短距離飛行しか行うことができない。そのために、高高度を飛行するにはカタパルトなどにより初期加速を得ることが必要だった。 
 ズシンという衝撃が機体を震わせた。降下する敵部隊への牽制のために、推進装置付のコンテナが打ち出されたのだ。基地には迎撃ミサイルなどという気のきいた兵装は配備されていなかった。 
 奇襲は最初から考えていなかった。基地の存在は知られており、相手も迎撃があることは予想ずみだろう。むしろ積極的に邀撃することによって、回避運動を取らせたかった。候補生で構成された部隊に無駄な損害を食らいたくは無かった。 
 部隊を先導するハルツ曹長が乗る重カウツが射出された。ハルツ曹長の任務は、高加速で敵部隊に殴り込みをかけ、護衛を蹴散らすことであった。その開いた穴に5人の候補生のフリーゲが次々と突入していく。そして最後にラムケが突っ込み、上陸部隊を乗せているであろうコンテナを攻撃する。それがKKに対して報告した作戦だった。うまくいくとはこれっぽっちも思っていなかったが。 
 フリーゲが射出される。候補生に無線の発信は禁止していた。無駄な叫びで貴重なチャンネルを使われたくはなかったからだ。5つのパレットが回収軌条を運動エネルギーを電気エネルギーに換えながら戻ってくる。 
「行くぞ。俺とハルツの心配はしなくていい。ヒヨコたちの尻尾を捕まえておけ」 
 司令所にいるクルツリンガーから間髪入れず返答がくる。 
『了解』 
 パレットがマスドライバーの射出軌条に押し込まれる。ラッチが外れ、加速が始まる。月の低軌道にいる回収船に物資を送るために作られた軌条のため強烈な加速は無いが、6分の1Gに慣れた身体には堪えるものだった。内臓が悲鳴をあげ、オナラが漏れた。 
『コンテナが交差します──』 
 網膜投影システムに基地からの情報が表示される。先に射出したコンテナが降下してくる傭兵軍の部隊と交差したのだ。コンテナは何事も無かったかのように通過したが、徐々に軌道がずれ出し、回収船との交差軌道を取れずに月面に向かって落ちていった。 
「ハルツ、気をつけろ。奴さん方は殺る気満々だ」 
『了解』 
 ハルツ曹長はパイロットスーツの閉鎖を改めて確認した。機体が損傷しても、スーツが無事なら100時間程度の猶予を与えられる。閉鎖が不十分なら、その数千分の1の時間も無く即死できる。 
 短距離レーダーの情報が視野に表示された。3基の揚陸ポッドの周りに6機の宙戦スーツが占位している。強敵である月面降下戦闘機の姿は見えない。ハルツ曹長は右手に握った感圧式操縦桿をわずかに押し込んだ。機体後部に搭載された戦闘エンジンが咆哮をあげる。 
 跳ね上がるように重カウツが加速を開始した。カウツの後部に高加速エンジンと燃料タンクを追加し、理論上単独で月軌道から地球軌道に遷移できる性能を持つ重カウツは、エッグイーターと並び、月低軌道におけるシュトラール軍の有力な機動兵器だった。 
 彼我距離が詰まっていく。赤外線を派手に撒き散らして接近してくる重カウツに気づいた護衛機が動き出す。降下のために軌道速度を落としたファイアボールSGは、比較的自由に位置を変えることができる。 
 ハルツ曹長はふんっと鼻を鳴らすと機体をさらに加速させた。レーザーガンの安全装置を外し、無照準で連射する。シュトラール軍の宙間戦闘スーツの主兵装は、エクサイマ拡散レーザーである。レーザーが秒速30万kmの速度を持つとはいえ、秒速数kmで互いに運動する宙戦兵器を完全破壊するだけの照射を維持するのは至難の業であるため、敵機を撃墜するより、わずかでも損傷させて戦闘能力を奪うことを目的にしていた。 
 短いエネルギー長のレーザーが小さな円を描くようにバースト射撃される。ファイアボールSGクラスの新型機の主装甲には損傷を与えられないが、アンテナやスラスター、動力パイプといった部分には効果的な打撃を与えることができた。もちろんそれを知っている傭兵軍パイロットも、装甲が一番厚い胴体部を向けて応戦する。 
 20回のバースト射撃を終えたハルツ曹長機が交戦圏内を離脱する。重カウツの推力であれば、減速し反転、再加速を行うことによって再攻撃も可能であったが、それは命令に含まれていなかった。そのまま軌道を維持して、回収船へ向かう。 
 次に交戦圏内に突入したのは、ゲルプケ士官候補生機だった。遠めからレーザーを牽制射撃し、自分の進路上からファイアボールを追い出すことに精一杯であった。ゲルプケ機が通過する直前に、ネスラー士官候補生機が戦域に突入してきた。 
 護衛部隊も攻撃パターンを読み取り、攻撃正面に護衛機を集中させた。迎撃射撃がネスラー機を掠め、右スラスターに損傷を与えた。ネスラー機の軌道は大きく変わり、回収船を飛びこして行くことになった。 
 3番目と4番目に飛び込んだ士官候補生機の運命は悲惨なものとなった。狙撃に近い形で胴体をまともに照射され、一発も射撃することなく残骸と化した。5番目に突入する予定であったヅッカー機は事前に進路を変えて護衛機の脇を掠めるように飛びぬけ、無駄とわかっていながらも揚陸ポッドに射撃を加えた。 
「くそっ」 
 ヘルメットの中に悪態を吐き出し、ラムケは機体を加速させた。射程に入ると同時に射撃レーダーを揚陸ポッドに向けて放つ。ロックオンされたことに気づいた揚陸ポッドの要員が護衛機に向かって悲鳴を上げる。一瞬護衛機がそちらに注意を向けた隙を見計らって、レーザーを目視照準で護衛機に向かって乱射した。 
 1機のSGがもろに頭部ハッチに射撃を受け、衝撃で光学センサと間接視認システムを破壊される。眼を奪われたファイアボールが緊急加速で戦域から離脱し、防御網に穴が開いた。ラムケはそこに機体を潜り込ませると、揚陸ポッドの乗員の肝が縮み上がるように、射程外に飛びぬけるまでレーザーを叩き込んだ。 
『再攻撃しますか?』 
「損害が大きすぎる。俺はネスラーを拾って帰る。おまえはヅッカーの支援に回れ」 
『了解』 
 ラムケは重カウツを反転させ、降下していく傭兵軍揚陸部隊の姿を見ていた。減速のスラスター炎がしばらく見えていたが、不意に見えなくなり、灰色の月面だけが視野一杯に投影されるだけになった。そこには戦闘があった形跡は一つもなかった。 

 

 戦闘を開始した傭兵軍は、第504砲兵連隊の猛烈な砲撃支援の下、いとも簡単に防衛線を突破した。 
 第504砲兵連隊の放つ砲撃は凄まじく、砲兵観測機のレーザー誘導によって誘導される貫通弾は、月の地表に深々と突き刺さると爆発し、衝撃により防御陣地の地下施設を破壊、新たなクレーターをいくつも作り出した。破壊された防御陣地を精鋭の第101連隊が突き破り、鉱山基地へ殺到した。 
 迎撃に繰り出した無人兵器群も砲撃により文字通り粉砕され、移動経路を辿られたことにより発見された無人兵器整備基地も、3発の重貫通弾でクレーターと化した。 
 無人大隊が支援に回されるも、降下したスネークアイ中隊によって前進を阻止された。戦況は傭兵軍に有利であり、シュトラール軍は防戦一方となった。KKは、周辺基地の守備兵力と司令部予備となっていた無人大隊を救援に差し向ける命を下した。 
 しかし、戦線から遠く離れていた第0912小隊にはその命令は下されなかった。戦線までの距離が遠いということもあったが、別の任務が与えられたからだった。

 発令所には重苦しい空気が満ちていた。 
 ラムケはCRTに表示されたKKからの命令文を苦々しい表情で見据えていた。本来なら指揮官だけしか閲覧を許されない通信であったが、ラムケの苛立ちはそんな規則も無視させていた。 
「諜報員の回収ですか……またまたはた迷惑な」 
 珍しくハルツ曹長が口を開いた。普段は無表情とも思えるほどの鉄面皮なのだが、口元に笑みを浮かべている。それも運命の皮肉に笑うしかないという笑みである。 
「大尉の部下でいると退屈しませんなぁ。で、何をすればよろしいので?」 
 ハルツ曹長はニヤリと笑った。こんな芸当も先任下士官に必要なことだ。 
 曹長の言葉にラムケは大きく息を吐いた。 
「尻拭いは今に始まったことじゃないな。中尉は基地の指揮。ハルトヴィックは無人兵器を指揮しろ。こっちは月の上を飛び跳ねなきゃならんからな。曹長は俺のお守りだ」 
 出撃準備が行われる。揚陸部隊との交戦により、フリーゲ2機を喪失、回収できた1機も使い物にならなくなっていた。出撃できるのは重カウツ2機とフリーゲ1機だけだった。 
「ヅッカー、出られるのはおまえだけだ。人数合わせに来い」 
 まだ若い候補生は青白い顔をしてうなずいた。シュトラール軍人が普通に体験する宙間戦闘は、大型艦による艦隊戦か、小型の戦闘艇による軌道上での戦闘である。どちらも分厚い装甲に覆われた船内にすえられたGシートに縛り付けられて行うものであり、前者に至っては本物の宇宙空間を見ることすらなかった。それに対し、第0912小隊に配置された候補生が体験したのは、裸同然といっても過言でもない薄い装甲で覆われ、遮蔽ガラス越しに生の宇宙空間を見せ付けられるという戦闘だった。気密が緩む、機器の一部が故障するといったわずかな事が原因で、高い確率で死がやってくるのだ。 
 ラムケはヅッカーにヘルメットを手渡しながら耳元で言った。 
「怖かったら出撃直後に基地に戻れ。理由は何とでもつけてやる。こういう時は無駄に勇敢な奴ほど迷惑だ。やる気になったからと状況を克服できるなんていうヒヨコがいるのは、映画とアニメの中だけだ」 
 ヅッカーは無言でヘルメットを装着するとフリーゲに乗り込んだ。ラムケはキャノピの閉鎖を確認すると、機体の背中を大きく音を立てて叩いた。 
「ヒヨコの面倒は任せてください」 
「何時に無く饒舌だな、曹長」 
「ここに来る前は訓練教官でした。忘れてませんか?」 
「そうだったな」 
「大尉は任務を。自分は支援に回ります」 
「わかった」 
 機体に乗り込みハッチを閉鎖する。網膜に像が結ばれる。赤いランプに照らされた薄暗いハンガー。 
「状況を確認する。回収する工作員は、傭兵軍の一部隊に紛れてこちらに向かっている。搭乗機は、電子識別塗装がされている白いピーナッツだ。見かけは普通のピーナッツだから、射撃する時には気をつけろ。最初に無人機をぶつけて他の機体を引き剥がして、標的が離脱したら回収し帰還する。簡単だろう」 
 ラムケはKKから送られてきた情報を頭の中で反芻した。回収する工作員は、傭兵軍の虎の子部隊である第504砲兵連隊に潜り込み、様々な情報を入手していた。回収後は基地にある連絡艇で諜報部隊が待つ軌道基地まで送り届けることになっていた。第0912小隊が回収部隊に選ばれたのは、軌道基地にまで上昇できる連絡艇を持っていたからであると但し書きがつけられていたが、そんなことは信じなかった。 
 基地に併設された無人兵器整備基地から2機のガンスと1機のフクスが出撃する。フクスは2機配備されていたがパーツの損耗によりもう1機のパーツ取り用となっていた。ガンスが先行し、基地から離れるとスラスターを吹かしながら交互躍進をしながら前進していった。 
『あひる1と2が先行しました。キツネは援護位置につけてます』 
「少し脅かす程度でいいぞ。本気で抵抗されたら、逃げ出す機会を失うかもしれん」 
『わかりました。あ、大尉』 
「何だ?」 
 ハルトヴィックは返答より先に情報を送ってきた。 
「こいつは……」 
『あひる2が拾った電波です。候補生がノイズにしては有意すぎると思うと報告してきたもんで』 
 拾われた電波は、短い信号と長い信号、そして空白が順不同で一定の間隔で発信されていることを示した。当初は部隊間通信のサイドロープかと思ったが、普段使われていないバンドであるし、信号自体にも情報が含まれていなかった。傍受したガンスもノイズとしてフィルタリングし、メインメモリには記録していなかった。しかし、リアルタイムで基地に送信しているデータには、すべての傍受情報が載せられていたのだ。 
──どこかでみたことがあるな…… 
 ラムケは一瞬だけ考え、そしてその電波が何を示すのかを悟った。 
「KKに警告。砲兵観測隊が行動中。目標は前進中の無人大隊だ」 
 初期宇宙時代に失われた符号通信──モールス信号であることに気づいたのだ。 
「あひるとキツネを接敵させろ! 出るぞ! 工作員の確保を優先。敵は砲兵観測部隊だ。長距離精密射撃に気をつけろ」 
 パレットが誘導路から本線に突っ込み、間髪入れずに短い加速とともに低空で射出される。大気が無く重力のある月面では、低空で墜落しないためには加速し続けるしかなかった。外部推進剤タンクの残量が見る見るうちに減っていく。 
 後方からはハルツ曹長の重カウツとヅッカー候補生のフリーゲが、やや高度を高く保ちながら追尾してきていた。彼らは低空行動では索敵が疎かになりがちな後上方をカバーするのだ。 
『あひる1が接敵。数は6、スーツタイプ5、認識不明機1。不明機は識別表に載っていない新型機です』 
「こっちでも捉えた。あひるは距離をとり情報収集。お荷物の確認をさせろ。キツネは待機」 
 光学センサがクレーターの外縁部の露岩帯に身を隠している一団を捕捉する。距離は十数km先だが、大気の無い月面で遠くまで見通すことができる。 
『大尉、後方より敵機──カボチャ野郎です』 
「くそっ。仕事を終えるまでひきつけろ。奴等は長距離飛行して帰えらにゃならんからな。時間を稼げ」 
『了解。ヅッカー、俺についてこい』 
 ハルツ曹長は重カウツを反転させると、クレーターの稜線ぎりぎりを飛び越してきた数機のファイアボールを迎え撃った。突っ込んできたファイアボールは、ブラックグリーンの機体の頭部ハッチにパンプキンオレンジでハロウィンのカボチャを描いた傭兵軍第1031偵察中隊「ジャック・ランタンズ」の所属機であった。ランタンズは、偵察中隊と銘打たれてはいるが、無人偵察機狩りを専門とする殴りこみ部隊だった。 
 上空から2機が降下してくることに気づいたランタンズが急制動をかけ速度を殺すと、スラスターを吹かしてロケットのように急上昇してきた。月面を我が庭のように駆けまわっているランタンズならではの機動だった。 
「交差して低空に出たら、そのまま南に飛べ。距離をとってから上昇するんだ。すぐに上昇すると頭を抑えられる。そうしたら命は無い」 
 空になった外部推進剤タンクを切り離す。直後、切り離したタンクがレーザーの直撃を受けて四散する。ハルツ曹長はニヤリと笑うと、真っ先に舞い上がってくるカボチャ野郎に照準を合わせてトリガーを引き絞った。レーザーの弾幕射撃をかろうじてかわし、ファイアボールが上昇する。月面すれすれに降下した重カウツは、持ち前の大推力を生かしてカボチャたちが反転する前に上向きに加速した。その横でフリーゲがタッチ・アンド・ゴーで南に向かって飛ぶ。 
 ランタンズが反転しながら短い通信を交わす。2機のファイアボールがヅッカー機の追撃に向かう。 
 その瞬間をハルツ曹長は見逃さなかった。左腕を伸ばすと、追撃に向かうファイアボールにレーザーを浴びせる。長距離射撃のため減損するとはいえ、背中に装甲の無いファイアボールには致命的であった。推進器を損傷した機体が大量の推進剤を撒き散らしながら錐揉みに陥る。さらなる射撃が推進剤に爆発的反応を起こさせ、強烈な赤外線源を作り出した。 
 爆炎は強烈な光量で周囲にいた機体の光学センサを焼いた。 
「これ以上の追撃は不可能だ。着地して待機しろ」 
 光学センサが破壊され、レーダーのみが機能していた。同様の装備を搭載するファイアボールも同じ状態になっているようで、素早く反転すると射程外へと消えていった。 
『背中の敵は追い払いました』 
 ハルツ曹長の言葉を聞き流しながら、ラムケは接近を続けた。眼下を2機のガンスがブースターを吹かして加速していく。盛大に赤外線を撒き散らせば、いやでも発見される。隠密で行動したがる砲兵観測部隊がどう動くか。動揺してくれれば良いと思った。 
 思ったとおり動きがあった。数機のスーツが動いた。 
「ガンスを停めろ。フクスは前──待てっ!」 
 露岩帯に爆発光が走った。大量のレゴリスが綺麗な放物線を描きながらスクリーン状に展開する。何らかの爆発物を爆発させることにより、砂を吹き飛ばしたのだ。 
 ガンスのセンサが光学および赤外線領域でアウトした。目標を見失ったガンスは、自己防衛機能に従い後退する。ラムケは高度を下げ、一旦稜線下に着地した。 
 警報が鳴る。後退したガンスが赤外線レーザの射出を観測したのだ。レーザーは、周辺をなぎ払うように発振されていた。レーザによる狙撃を警戒するガンスは、周囲に警報を発し続けた。レーザの射撃方向から、敵がこちらを捕捉していないのは明らかだったが、砲兵観測部隊ということもあり、慎重に行動する必要があった。下手に接近すれば、大口径の砲で地形ごと一掃されかねない。 
「フクスを前進させろ! 砂が落ちきったら突撃させる」 
 その直後、通信機が鳴った。直接通信ではなく、予め作られた信号を広域で発信したものだった。視神経に像が挿入される。逃げ出してきた工作員の識別信号だった。 
「このタイミングで、か。バレたか、痺れをきらしたか」 
 時間が無かった。下手をすれば工作員を始末されかねない。死体を持ち帰るといったことになれば、自分たちを月に追いやった連中はそれ見たことかというだろう。 
 戦闘用エンジンを点火し、稜線から一気に上昇する。数条のレーザーが機体を掠める。 
「──照準用か!」 
 スクリーンの向こうから飛んできたレーザーは、砲兵観測機の照準レーザーだったのだ。敵は無武装か、それに限りなく近い状態にある。状況を数字でしか認識しない機械と、どんな事にも何かと深読みする人間が、その思考ゆえに同様に騙されたのだ。 
 ラムケは崩れ落ちたレゴリスの壁の向こうに現れた、見慣れない装甲服に照準した。スネークアイに似たシルエットを持つその装甲服は、腕の代わりに大型のレーザとセンサーポッドを装備していた。一瞬捕獲してやろうと思ったが、古くから伝わる諺を思い出してやめた。 
「月の兎は逃げ足が速いからな」 
 白く塗られた装甲服をエクサイマレーザの一撃で粉砕する。その向こうを1機の四脚機に護衛された一団が飛び跳ねながら逃げていく。撃破された装甲服が地面に転がると、岩陰から白いAFSが姿を現し、ラムケに向かって手を振った。 
「そのまま俺が飛んできた方向に離脱しろ。すぐに迎えが来る」 
 基地に通信を送り、後方に待機しているハルツとヅッカーを迎えに送らせる。間接視認システムを破損しているハルツであったが、予備システムを使って行動できた。 
 戦闘用エンジンに推進剤を送り込み、機体を月面に向かって加速させる。空気が無い分、地面が近くに見える。高度計を視界にオーバーラップさせ、月面への衝突を防ぐ。 
 逃走する敵部隊のうちの1機が立ち止まった。ラムケは緊張した。敵は劣勢だが、何をしでかすかわからない相手だった。 
 立ち止まったファイアボールSGが突然フルブーストで飛び上がった。ある程度は予期していた行動であったが、襲撃のために加速しすぎているラムケ機には追従が難しかった。眼前を急上昇したファイアボールはエクサイマレーザを乱射した。それをロールを打ってかろうじてかわした。 
 上昇したSGのスラスターからガスの放出が止まる。推進剤切れとなったSGはしばらく宙にぶら下がっていたが、そのまま月面に墜落した。ラムケはガンスとフクスに逃走部隊の追跡を続行させると、月面に降下した。 
 墜落したファイアボールは岩に背を預けて横たわっていた。最後の最後で絞り出した推進剤を使って逆噴射したのだろう、機体に大きな損傷は見られなかった。 
 ラムケはエクサイマレーザーを構えながら接近し、左腕を足で押さえた。キャノピを接触させ、振動による会話を試みる。 
「群れを逃がすために残ったか。いい度胸だ」 
 しばらくして、くぐもった若い男声が返ってくる。 
『こっちの言葉が話せるのか』 
「敵の操る言葉を使いこなすのも仕事だからな。マニュアルぐらいは読めるようにしたい」 
『なら話は簡単だ。俺は罠のエサだ。あんたは罠の真ん中にいる』 
「だろうな」 
 ラムケは背を伸ばしてファイアボールから距離を取った。すぐにこの周辺は砲撃に見舞われるだろう。敵の司令部が、その価値があると判断したなら。 
「今回はこっちの負けだ。ハルトヴィック! 無人兵器を全機後退させろ。撤収する」 
 巡航エンジンに点火し、緩やかな加速で上昇する。しばらくして眼下に数発の砲弾による小さな爆発炎が光るのが見えた。ラムケはあの若いパイロットが生き残ることを願っていた。 

 ラムケが基地に付く頃には、すでに連絡艇は発進していた。 
 作戦は傭兵軍が一時鉱山基地の占拠に成功したものの、シュトラール軍の無人兵器大隊が損害に構わず突進し、傭兵軍の防御部隊を粉砕した。傭兵軍は第504砲兵連隊によりKKの撃破を狙うものの、工作員からもたらされた情報により逆に居場所を探知され、猛烈な攻撃を受けることになった。虎の子の部隊を失う危険を負いながらも傭兵軍司令部は反撃を決め、数時間に及ぶ激戦の後にKKを大破させることに成功、砲兵車6基を撃破されたものの基地を確保した。 
 鉱山基地を失ったシュトラール軍は戦線を後退させ、傭兵軍が基地を増強することを防ぐという消極的な作戦をしばらくとることになった。 
 第0912小隊はそのまま残留となり、戦闘を生き残ったものの本隊へ復帰が不可能となった損傷無人兵器の回収という後片付け的な任務を命じられた。 
 月面での戦いはしばらく続く。 

 

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